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消防設備士とは?試験概要から仕事内容、年収までまとめ

公開日:2022年9月7日 更新日:2023年3月29日

消防設備士とは?試験概要から仕事内容、年収までまとめ


消防設備士とは?試験概要から仕事内容、年収までまとめ

消防設備士コラム2

消防設備士は、乙種と甲種の2種類あります。乙種は消防設備の点検・整備、甲種は乙種の範囲に加えて消防設備の工事にも従事可能な資格です。

消防設備士は非常に需要の高い国家資格ですが、多くの資格区分が設けられているため、受験する際には情報の確認が必要です。

今回の記事では、消防設備士の試験概要と仕事内容、年収について解説します。ビルメン業界への転職に必要な関連資格もご紹介しているので、是非ご覧ください。

消防設備士の資格とは

消防設備士の資格は、法律で建物への設置が定められた消防用設備等の工事・整備・点検ができる国家資格です。

乙種1~7類、甲種1~5類、甲種特類の計13種類にわかれている資格で、各分野において扱える範囲と業務内容は異なります。

ここでは、消防設備士資格の概要についてご紹介します。

消防設備士とは

消防設備士とは、消火器や火災報知器、スプリンクラーなど建物内に設置された消防設備を点検・整備できる国家資格です。法律で定められた方のみ従事可能なため、消防設備士は業務独占資格といえます。

また、建物は消防法によって規模に応じた消防設備の設置が義務付けられているため、消防設備士が活躍できる場所は多いです。

例えば、熱感知器であれば一定の熱を与えての動作確認、煙感知器であれば一定の煙量を導入し動作するかの確認を行います。

これらの感知器や他の消防設備は建物内に多く設置されているため、消防設備士は常に需要のある資格といえるでしょう。

乙種と甲種

消防設備士の資格は甲種1~5類、甲種特類、乙種1~7類の計13種類あり、それぞれにおいて扱える消防設備士と業務範囲は異なります。

  • 甲種:消防設備等又は特殊消防用設備等(特類の保有者のみ)の工事・整備・点検
  • 乙種:消防用設備等の整備・点検

また、各資格区分における工事整備対象設備は次のとおりです。

種類 区分 工事整備対象設備等
甲種 特類 特殊消防用設備等(従来の消防用設備等に代わり、総務大臣が当該消防用設備等と同等以上の性能があると認定した設備等)
甲種又は乙種 第1類 屋内消火栓設備、スプリンクラー設備、水噴霧消火設備、屋外消火栓設備、パッケージ型消火設備、パッケージ型自動消火設備、共同住宅用スプリンクラー設備
第2類 泡消火設備、パッケージ型消火設備、パッケージ型自動消火設備
第3類 不活性ガス消火設備、ハロゲン化物消火設備、粉末消火設備、パッケージ型消火設備、パッケージ型自動消火設備
第4類 自動火災報知設備、ガス漏れ火災警報設備、消防機関へ通報する火災報知設備、共同住宅用自動火災報知設備、住宅用自動火災報知設備、特定小規模施設用自動火災報知設備、複合型居住施設用自動火災報知設備
第5類 金属製避難はしご、救助袋、緩降機
乙種 第6類 消火器
第7類 漏電火災警報器

引用:一般財団法人 消防試験研究センター

消防設備士の仕事内容

公共施設やビルなどでは定期的に消防設備の点検が法律で定められているため、消防設備士は全国各地で活躍できます。

具体的には、消防設備の点検・整備、甲種の資格保有者であれば消防設備の工事がメインの仕事内容です。消防設備士の工事としては、新しい建物などで行うスプリンクラーの設置工事などが該当します。

そのため、消火設備士の資格を保有していない方は消防設備の点検・整備・工事には従事できません。アシスタントとしては従事できますが、消火設備に対する責任を取れないので注意が必要です。

消防設備士の年収

消防設備士の平均年収は、約400万円~500万円です。日本人の平均年収が436万円であることから、消防設備士の年収は決して低くないことがわかります。

ただし、年収は年齢や会社の規模、仕事内容や地域によって異なります。そのため、平均年収を下回ることもあるでしょう。

年収を上げるための方法としては、経験を積む、新規資格を取得する、転職するといったことが挙げられます。

消防設備士としての経験を積めば必然的に需要が高まりますし、甲種第4類や乙種第6類といった需要の高い資格を取得するだけでも企業からのニーズは増加します。

後にご紹介しますが、電気工事士や危険物取扱者などの関連資格も取得してビルメン業界に転職するといった方法もあるため、消防設備士は非常に年収アップに繋げやすい資格といえるでしょう。

消防設備士を取得するメリット

消防設備士を取得するメリットには、次の3つがあります。

  • 昇進・昇給ができる
  • 将来的な需要が見込まれる
  • 人の命を守る使命感を持って働ける

ここでは、それぞれのメリットについてみていきましょう。

昇進・昇給が期待できる

消防設備の設置は、消防法にて義務付けられています。加えて、消防設備の点検は消防設備士しか取り扱えません。

特に自動火災報知器の工事も取り扱える甲種第4類は工事案件も多く、企業からの需要も非常に高いです。乙種第4類についても点検・整備が行えるため、需要は低くありません。

そのため、消防設備士を取得すると企業からの信頼度が上がり、キャリアアップや昇給が期待できます。

また資格手当を支給する企業もあるため、年収が上がりやすいのもメリットです。

将来的な需要が見込まれる

現在の社会において、一般住宅やビル、病院などの建物では消火器や火災報知設備などが設置されています。

そのため、消火器を取り扱える乙種第6類や火災報知設備の点検・整備ができる乙種第4類、加えて工事も可能な甲種第4類は今後も需要が途絶えることはありません。

技術者に付加価値が生まれるためAI時代が到来してもニーズがなくならず、将来的な需要を見込めるでしょう。

人の命を守る使命感を持って働ける

消防設備士が取り扱う消防設備は、建物に火災が生じた際に素早く対応するために設置されたものです。

そのため、消防設備の整備・点検に従事する消防設備士は間接的に人の命を守る仕事ともいえます。安心した生活を実現するための仕事といったやりがいや使命感を持って働くことが可能です。

消防設備士の試験概要

消防設備士の試験は「一般財団法人 消防試験研究センター」が取り扱っています。
ここでは、消防設備士の試験概要についてご紹介します。

受験資格

消防設備士の乙種には受験資格がありません。年齢や学歴に関係なく、誰でも受験できます。一方で甲種には、以下の受験資格があります。

1 大学・短期大学・高等専門学校で機械・電気・工業化学・土木・建築などの指定学科を卒業している
2 電気工事士・建築士の資格保有者
3 乙種消防設備士の資格取得後、2年以上の実務経験がある

参照:甲種消防設備士 受験資格

試験会場

乙種・甲種の試験会場は、各都道府県にある消防試験研究センターの指定場所です。受験票に記載されているため、届き次第、試験会場は必ず確認しておきましょう。

試験日程

試験日程は、乙種・甲種ともに受験する都道府県によって異なります。

首都圏では月1回、地方では2~3ヶ月に1回といったように変則的なため、消防試験研究センターにてスケジュールを確認しましょう。

受験料

受験手数料は乙種3,800円・甲種5,700円(非課税)です。

受験の手続き

消防設備士を受験するための手続き方法としては、書面申請と電子申請の2つあります。乙種・甲種における手続きの流れが次のとおりです。

受験の手続き 詳細
申し込み 受験する試験地を決定し、願書の取り寄せ又は電子申請にて受験申込みを行う
受験票の送付 書面申請を行った方には受験日の1週間前までに受験票が送付され、電子申請の方には受験票がダウンロードできるメールが送られます。
試験 受験票に記載された試験日、試験会場にて受験します。受験票には顔写真の貼付が必要です。

また、一部の科目免除を行う方は受験手続きに伴って必要な書類を用意してください。具体的な準備物は「消防試験研究センターにて記載されています。

試験科目

消防設備士の試験には、筆記試験と実技試験があります。実技試験では実務に近い問題が出題されるだけで具体的に何かをするといったことはありません。

  • 鑑別:消火設備の写真やイラストを見て、装置の名前や使い方を記述する
  • 製図:建屋の平面図に配線を書き込んだり系統図から電線本数を答えたりする問題

製図は甲種のみですが、実技試験の科目は上記のとおりです。また、各区分の試験科目と出題数については次の表をご覧ください。

筆記試験

区分 試験科目 出題数
乙種 消防関係法令 5問
基礎的知識 5問
構造・機能・整備 15問
合計 30問
甲種 消防関係法令 15問
基礎的知識 10問
消防設備等の構造・機能・工事・整備 20問
合計 45問

技能試験

区分 試験科目 出題数
乙種 鑑別 5問
合計 5問
甲種 鑑別 5問
製図 2問
合計 7問

参照:一般財団法人 消防試験研究センター

出題形式

消防設備士の出題形式は、筆記試験がマークシート式(四肢択一)、実技試験が記述式です。合格基準は、合計60%以上の得点かつ各科目で40%以上の成績と定められています。

消防設備士の合格率と合格基準

消防設備士乙種第4類・甲種第4類における過去5年間の合格率については、次のとおりです。試験のデータから傾向と難易度をみていきましょう。

実施年度 合格率(甲種第4類) 合格率(乙種第4類)
令和3年度 42.4% 39.2%
令和2年度 39.0% 37.2%
令和元年度 33.6% 33.0%
平成30年度 32.4% 32.4%
平成29年度 30.7% 32.4%

引用:一般財団法人 消防試験研究センター

上記が過去10年間における合格率です。乙種第4類・甲種第4類ともにここ数年の合格率は大きく差がないことがわかります。

そのため、資格を取得する際には消防設備の工事にも従事できる甲種第4類の取得をおすすめします。

ただし難易度が低いというわけではないため、試験当日までの効率的な勉強が合格するために大切です。

消防設備士に関連する資格

消防設備士に関連する資格には、次の4つがあります。

  • 危険物取扱者
  • 電気工事士
  • ボイラー技士
  • 第三種冷凍機械責任者

消防設備士だけでも業務独占資格ですが、上記の関連資格も取得することで設備管理(ビルメン)業界の転職で有利になるといったメリットもあります。

特に、ビルメンは上記の4点セット+消防設備士といった扱われ方をすることが多いです。そのため、消防設備士とあわせて取得することで技術者としての価値を更に高められるでしょう。

ここでは、消防設備士に関連する上記の資格に関して概要をご紹介します。

危険物取扱者

危険物取扱者は、消防法に基づく危険物の取り扱いや定期的な点検、保安の監督を行える資格です。甲種・乙種・丙種の3区分設けられています。

ここでいう危険物とは、灯油や金属粉などの燃えやすい物質のことです。ガソリンや軽油なども該当します。これらを取り扱うには専門知識を有した技術者の管理が必要です。

また、ビルメン4点セットに含まれるのは危険物の乙4です。消防法により、引火しやすい液体が乙4の危険物として指定されています。

ビル等の危険物を取り扱う業種において転職や就職で有利となるため、取得することで得られるメリットは大きいといえるでしょう。

電気工事士

電気工事士は、ビルや工場、一般住宅における建物や設備の電気を扱う工事で活躍する資格です。第二種電気工事士と上位資格の第一種電気工事士があり、ビルメン業界では第二種からの資格保有者を求めています。

コンセントやブレーカー、照明器具を工事するだけでも電気工事士の資格が必要となるため、低圧のみの取り扱いである第二種電気工事士でも需要は非常に高いです。

また、第二種・第一種電気工事士のどちらか免状を取得していれば、消防設備士の試験科目が一部免除されるといったメリットもあります。

ただし、実際に従事する際には消防設備士と電気工事士両方の知識が必要となるため、各資格を取得するうえでお互いに活かせる部分を組み合わせることが大切です。

ボイラー技士

ボイラー技士とは、オフィスビルや商業施設、病院や工場などで利用されているボイラーを取り扱う資格です。取得することでビルメンテナンス業界においても活躍できます。

2級から特級の区分が設けられており、2級ボイラー技士は伝熱面積が3㎡以上のボイラーにおける操作・点検・管理・メンテナンスなどに従事可能です。

ただし、ボイラーは高温高圧で非常に危険なため、取り扱う際には適切な保守管理や慎重な操作をしなければいけません。

一つのミスでテナントに大きな損害を出すため、責任を持ってミスなく仕事することが大切です。

第三種冷凍機械責任者

第三種冷凍機械責任者は、業務用の空調や冷凍庫などに使われる冷凍機械設備を管理するための資格です。

100t未満の製造設備のみの保安しか行えませんが、決して業務範囲が狭いわけではありません。ビルや工場での冷凍空調機器や小規模な冷凍倉庫、冷凍冷蔵工場では100t未満の製造設備を多く取り扱っています。

ただし、ビルメン4点セットの中では最も難易度が高い資格といわれています。これは、空調設備の保安業務を行うにあたり、深い知識まで求められるためです。

まとめ

今回の記事では、消防設備士の試験概要と仕事内容・年収について、ビルメン業界への転職に必要な関連資格とあわせて解説しました。

本記事をまとめると、次のとおりです。

  • 消防設備士は、消防設備を整備・点検(甲種であれば加えて工事)できる資格
  • 消防設備士の平均年収は約400万円~500万円
  • 消防設備士はAI時代においても需要があり、将来性が見込まれる
  • 消防設備士第4類の合格率は、乙種が32.4%~39.2%、甲種が30.7%~42.4%
  • 消防設備士の関連資格には、電気工事士・危険物取扱者・ボイラー技士・第三種冷凍機械責任者がある

消防設備士は、取得することで多くのメリットを得られる国家資格です。特に自動火災報知器を取り扱える第4類は需要が高く、人気を集めています。

合格率は高いですが、決して難易度が低いというわけではありません。合格するためには継続的な勉強が必要です。

本記事でご紹介した内容を参考に、消防設備士の試験概要や取得するメリットについて情報を集め、試験へのモチベーションを上げましょう。


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