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【廃止を検討?】技術士補とは?技術士との違いや役割、業界での現状や動向もリサーチしました
公開日:2022年7月28日 更新日:2023年3月29日
【廃止を検討?】技術士補とは?技術士との違いや役割、業界での現状や動向もリサーチしました
【廃止を検討?】技術士補とは?
技術士との違いや役割、業界での現状や動向もリサーチしました
技術士補は、技術士になるための前段階として設けられている資格です。
ところが近年では技術士補の資格について、廃止も含めた見直しが検討されています。
これから技術士を目指す方は技術士補の資格がどうなるか、動向を注視しておくことも必要です。
この記事では技術士補について、さまざまな観点から解説します。
技術士との違いや役割、業界での現状や資格の動向について、詳しく確認していきましょう。
最終更新日:
技術士補とはなにか?
そもそも技術士補とは、どのような資格なのでしょうか。
まず技術士補の位置づけについて、また技術士補になる2つの方法について解説します。
技術士補が持つ2つの特徴
技術士補は、2つの特徴を持っています。
それぞれについて解説していきましょう。
高度な技術を活かし、技術士を補助する者という位置づけ
技術士補は、技術士を補助する位置づけを持った資格です。
但し補助する立場といえども、高度な技術を活かせる仕事でなければなりません。
高いスキルを持つ技術者にふさわしい仕事と成果が求められます。
日本技術士会では、技術士補の業務とはみなされない業務の例を示しています。
代表的なものを、以下に挙げました。
- 単純計算や検算
- 試験用機器の単純操作
- 機械、測定器等の監視
- 測量調査の補助
- 組立図から部品リストの作成
「技術士の資格を目指す技術者」という側面もある
技術士補は、「技術士の資格を目指す技術者」という側面も持っています。
そもそも技術士補は、技術士第二次試験を受験できる要件の1つに挙げられています。
第二次試験に合格し所定の登録を済ませれば、一人前の技術士となれるわけです。
このため技術士補は、技術士になる前のステップともいえるでしょう。
技術士補になる2つの方法
技術士補になる方法は、2つあります。
どのような条件を満たせばなれるのか、確認していきましょう。
技術士の第一次試験に合格する
1つ目の方法は、年1回実施される技術士の第一次試験に合格する方法です。
合格者は修習技術者になるとともに、所定の手続きを取ることで技術士補になれます。
受験資格はないため、実力さえあれば試験に合格することは可能です。
一方で技術士補の登録を行うためには、合格した技術部門と同じ部門の技術士を探さなければなりません。
このため受験する技術部門は、慎重に選びましょう。
大学等で学び、JABEE認定プログラムを修了する
技術士補になる資格を得る方法には、JABEE認定プログラムを修了する方法もあります。
大学や高等専門学校(高専)のなかにはJABEE認定プログラムに対応したコースや学科があり、修了・卒業することで技術士第一次試験合格者と同等のレベルにあると認定されます。
これにより修習技術者になれるとともに、技術士補になることが可能です。
該当する大学等は、「技術士法第三十一条の二第二項及び第三十二条第二項の規定に基づく教育課程及び対応する技術部門の指定について」ページで公開されています。
JABEE認定プログラムに対応するコースや学科は少ないこと、また認定される技術部門は限られることに注意してください。
技術士補の登録は義務ではない
修習技術者は、技術士補になる義務はありません。
一方で技術士補になると、技術士第二次試験に必要な実務経験が短くなるメリットはあります。
しかし技術士を目指すにあたり、技術士補であることは必須条件となっていません。
日本技術士会が2017年末から2018年初めにかけて会員向けに行ったアンケートでは、回答者の90%が技術士であることに対し、技術士補の登録経験がある方は27%となっています。
技術士補を目指す方は、少数派であることが実情です。
技術士補になる3つのメリット
技術士補になることには、3つのメリットがあります。
それぞれのメリットについて、順に確認していきましょう。
技術士補の肩書きを使える
技術士補の有資格者は、「技術士補」という資格名を示して業務を行えます。
但し技術士補の名称を使える場面は、技術士を補助する業務に限定されていることに注意が必要です。
このため実際には、技術士補の名称を使って仕事を行える機会は多くありません。
第二次試験を早く受けられる
技術士第二次試験の受験には、実務経験が必要です。
通常は7年間を超える期間が必要ですが、技術士補になると4年を超える実務経験で受験資格を得られます。
少しでも早く技術士になりたい方には、朗報といえるでしょう。
但し技術士補の要件で受験する場合、実務経験の期間は技術士補になった後の期間に限り参入できます。
すでに3年以上の実務経験をお持ちの場合、技術士補になる方法を使うメリットはありません。
資格手当を受け取れる場合がある
企業によっては、技術士補の方に資格手当を支給する場合もあります。
コンサルタント会社など、毎月数万円の手当を出す企業があることは見逃せません。
毎月の収入が増えることも、うれしいメリットといえるでしょう。
技術士との違いは?
技術士と技術士補には、いくつかの違いがあります。
ここでは3つの相違点を取り上げ、確認していきましょう。
技術士補よりも技術士のほうが上位の資格
技術士は、技術士補よりも上位の資格です。
技術士補は技術士を目指す技術者であり、他の技術士を補助する立場。
技術士は技術士補を指導する立場も担います。
技術士補は法令で定められた責任者等に選任される機会がほとんどない
技術士は「中小企業・ベンチャー総合支援事業派遣専門家」や建設業の営業所専任技術者、裁判所の鑑定人など、いくつかの法令で定められた責任者等に選任される資格を持ちます。
一方で技術士補の場合、このような特典はほとんどありません。
建設部門の第一次試験合格者が、「ダム水路主任技術者」に選任されうる程度にとどまります。
技術士補の資格では、他の国家試験の免除を受けられない
技術士は、さまざまな国家試験の免除を受けられます。
一例を以下に挙げました。
- 弁理士
- 消防設備士
- 施工管理技士
- 中小企業診断士
一方で技術士補の資格では、他の国家試験の免除を受けることはできません。
技術士補の役割と業界での評価
技術士補の評価は、あまりよいとはいえません。
ここからは技術士補の役割や必要性、業界での評価について確認していきましょう。
技術士補が担う役割や必要性
技術士補は「技術力をもって技術士を補助する」職種であり、社会のなかで一定の役割を果たしています。
日本技術士会は技術士補に登録した理由が「業務で必要」であった方が、技術士補登録者のうち7%いたことを示しています。
一方で技術士補の必要性は、高いとはいえません。
日本技術士会は技術士補に登録し第二次試験を受験した方の比率が、受験者全体の1.2%にとどまることを示しています。
95%の受験者は、7年超の実務経験で受験資格を得て第二次試験に挑戦していることが実情です。
そもそも技術士を補助する業務に、資格は必須ではありません。
このため技術士補は、なくてはならない業務とはいえません。
技術士補の現状
2019年5月に日本技術士会から、「技術士制度改革について(提言)「最終報告」」の文書が公表されました。
この文書から、技術士補の現状について確認していきましょう。
技術士補に登録する方の年齢層はどれくらい?
技術士補に登録した年代は、30代と40代がそれぞれ35%以上となっています。
技術士補は、ひと通り経験を積んだ方が技術士へのステップアップとして目指す資格です。
技術士になるまでの年数
技術士補になった方は、おおむね12年目までに技術士となっています。
さきに紹介したアンケートでも、技術士補になって10年以下の方は多いものの、10年を超えると該当者は急速に減少している結果が出ています。
技術士補は、将来的に技術士へランクアップする方が多い職種といえるでしょう。
業界における技術士補の評価
技術士補の評価は、あまり高くありません。
アンケートでは、以下の結果が得られています。
回答内容 | 割合 |
---|---|
何らかの形で技術士補の制度を見直すべき | 80% |
技術士補の制度を廃止し、修習技術士に一本化すべき | 46% |
継続的に技術士補の名称を用いて活動可能とすべき | 23% |
「技術士補の制度自体がいらない」という回答が半数近くにのぼる一方で、技術士補の価値向上を求める声も少なくありません。
技術士補の現状と、登録者数が伸びない3つの理由
「技術士補の登録は義務ではない」で解説したとおり、修習技術者のなかで技術士補の登録をした方は少数派です。
なぜ技術士補の資格を取得しないのでしょうか。
その理由を3つに分けて、詳しく確認していきましょう。
長年の実務経験をもとに第二次試験を受けられる
技術士の第二次試験は、以下の条件を満たせば受験できます。
- 修習技術者であること
- 科学技術に関する業務に従事した期間が7年を超えていること
業務に従事した期間は、修習技術者になる前の期間も含みます。
また技術士第一次試験と第二次試験の技術部門を変えることも可能です。
すでに7年を超える実務経験を持つ方は、技術士補になっても「第二次試験を早く受けられる」メリットがありません。
それよりも早く第二次試験を受けて、技術士になるほうを選ぶ方も多いでしょう。
このことは技術士補にならない方が多い理由の1つに挙げられます。
登録に要する費用がもったいない
技術士補への登録には、以下の費用がかかります。
- 登録免許税(15,000円)
- 登録手数料(6,500円)および振込手数料
- 申請書類の郵送料
おおむね22,000円程度の費用が必要です。
この金額は決して小さい額ではないため、費用を理由として技術士補の登録をためらう方も多いことでしょう。
指導技術士が見つからない
技術士補を申請するためには、あなたが業務を補助する技術士(指導技術士)を事前に見つけておかなければなりません。
社内に技術士がいれば簡単かもしれませんが、そうでない場合は困難という方もいるでしょう。
さきに紹介した日本技術士会のアンケートでも、このことが示されていました。
- 指導技術士の確保が困難という方は、18%あった
- 技術士補を登録しなかった方のうち、「指導技術士が身近にいない」ことを理由に挙げた方が3割弱いる
指導技術士が必要という条件は、技術士補を申請しにくくする壁の1つとなっていることがうかがえます。
技術士補は今後どうなる?
技術士補にはさまざまな課題があるため、制度の見直しが検討されています。
ここからは技術士補がどうなるか、検討されている背景と2つの方向性をみていきましょう。
技術士補の見直しが検討されている背景
技術士補の見直しが検討されている背景には、以下の事項が挙げられます。
- 大多数の方は、技術士補の資格を得なくても技術士になっている
- 技術士補でなければできない業務がなく、メリットも少ない
- 登録に必要な指導技術士を見つけにくい
いずれも技術士補の制度が使われにくい、主な原因です。
示されている2つの方向性
技術士補は廃止する方向性と、より使いやすい制度とする方向性が検討されています。
それぞれどのような方向性が示されているか、確認していきましょう。
廃止する観点での方向性
そもそも技術士補は、将来技術士を目指す方が得る資格です。
このため「修習技術士」に一本化し、技術士補の廃止を目指す案が出されています。
より使いやすい制度とするための方向性
技術士補は登録に際し、あらかじめ指導技術士を見つける必要があります。
登録の際は第一次試験で合格した技術部門と、指導技術士の技術部門が一致していなければなりません。
この点は、技術士補への登録を阻む原因の一つです。
このため技術部門に関わらず、指導技術士が見つかれば技術士補の申請を可能とする案が出されています。
技術士補の登録方法
技術士補になるためには以下の書類を添えて、日本技術士会に申請する必要があります。
2022年5月現在、申請方法は郵送のみとなっていることに注意してください。
書類は日本技術士会「「技術士補」の新規登録手続き」ページからダウンロード可能です。
書類 | 備考 |
---|---|
技術士補登録申請書 | 技術士第一次試験合格者とJABEE認定課程修了者では、書式が異なる |
補助しようとする技術士の証明書 | – |
登録証発送用宛名ラベル | – |
場合によっては、以下の書類が必要となる場合もありますのでお確かめください。
書類 | 必要となるケース | 備考 |
---|---|---|
補助しようとする技術士に係わる勤務先の同意書 | 申請者と技術士がそれぞれ異なる会社に勤務する場合 | 「技術士補」の新規登録手続き」ページからダウンロード可能 |
JABEE認定課程を修了したことを証する書類 | ABEE認定課程修了者 | 学校から発行してもらう必要がある |
申請には、以下に挙げる2種類の費用がかかります。指定された方法で納付してください。
費用の項目 | 金額 | 用意する方法 |
---|---|---|
登録免許税 | 15,000円 | 収入印紙(消印をしないこと) |
登録手数料 | 6,500円 | 指定の口座へ振込み。ATMやインターネットバンキングも利用可能 |
申請内容に問題がなければ、簡易書留郵便で「技術士補登録証」が届きます。
申請書類発送から2週間程度を目安にするとよいでしょう。
但し3月から5月に申請した方は、到着まで1カ月程度かかる場合もあります。
まとめ
現状の技術士補は、使い勝手がよいとはいえません。
技術士第一次試験合格者の一部しか登録していないことが、実態を証明しています。
資格を残すならば、それに見合う権限も付与することが望ましいといえるでしょう。
日本建設情報センターでは、技術士第一次試験に向けた通信講座を開講しています。
最短の時間で技術士を目指すためにも、ぜひ活用をご検討ください。
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