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巻上げ機運転特別教育とは?講習内容や受講手続きなどを解説
公開日:2024年8月30日 更新日:2024年8月30日
巻上げ機運転特別教育とは?講習内容や受講手続きなどを解説
「巻上げ機運転特別教育」の講座は、巻上げ機を安全に運転することを目指して作業員の知識と意識の向上を図る狙いがあります。
巻上げ機を運転する作業員は労働安全衛生規則第36条11号により、「巻上げ機運転特別教育」の受講が義務づけられています。なぜ巻上げ機運転特別教育の受講が必須なのでしょうか。またその講習の内容や受講手続きについて解説いたします。
目次
巻上げ機運転特別教育の概要
巻上げ機は重量のある荷を、ドラム(巻胴)に巻き付けたワイヤーロープ等で上げ下ろしさせる機械のことです。ウインチとも呼ばれており、建築現場や林業、漁業などで幅広く活躍をしています。
必要性と目的
巻上げ機の種類は数多くあり、用途によって取り扱い方法もさまざまです。そのため誤った操作など人為的ミスが発生しやすく、大きな事故に発展することも少なくありません。
「巻上げ機運転特別教育」を受講する必要性があるのは、現場で作業する労働者の安全を確保するためです。巻上げ機の操作方法や基本的な知識をそれぞれが身につけることで、事故の減少を期待できます。
巻上げ機運転の基本知識
巻上げ機は、車両や建築資材や木材など重量のある荷材を吊り上げ下げ横引きをして、さまざまな現場でスムーズに作業を行うために使われています。
巻上げ機には動力別に種類があり、それぞれ特徴や用途にも違いがあります。
特徴と用途によって操作方法にも違いがあるため、それぞれ知識が必要です。
- 手動式巻上げ機
1. 回転式巻上げ機
2. ラチェット式巻上げ機 - 電動式巻上げ機
- エンジン式巻上げ機
- 油圧式巻上げ機
- 空気圧式巻上げ機
巻上げ機は動力や機能によって種類が異なります。手動式の家庭用で使用するものから、電動式・油圧式・空気圧式などの大型の巻上げ機は多くの業界で使われており重宝されています。
対象者と受験資格
「巻上げ機運転特別教育」の受講資格は満18歳以上の者が対象者です。また、巻上げ機を操作する作業員は必ず受講しなければいけません。
巻上げ機特別教育の資格で可能な主な業務
「巻上げ機運転特別教育」を受講することで、巻上げ機を操作することができるようになりますが、この資格だけでは操作できないものもあります。
巻上げ機は使用する場所や内容によって、形状にも大きな違いがあり操作方法も同じではありません。
クレーン等に装備されている巻上げ機は「巻上げ機運転特別教育」を受講しても扱うことはできません。
建設現場での操作
巻上げ機はさまざまな形状があり、仕事によって使い方が異なります。
建設現場では規模によっても違いはありますが、建築資材や鉄塔などの重量のある荷材の吊り上げ、吊り下げなどを行います。
工場での搬送作業
工場での搬送作業も建築現場と同じで、工場の規模や扱っているものによって巻上げ機の形状に違いがあり、操作方法は同じではありません。
搬送作業の多い工場では、けん引に特化した巻上げ機を利用します。巻上げ機は荷材を吊り上げたり下げたりするだけでなく、横に引っ張って仕事をするものもあります。
他の資格が必要な作業
巻上げ機はクレーン等に取り付けて利用することがあり、クレーン運転の資格は必要です。
クレーンを使った巻上げ機の運転での必要な講習
- クレーン・デリック運転士教習(床上式クレーン限定)
- クレーン特別教育
移動式クレーンを使った巻上げ機の運転での必要な講習
- 移動式クレーン運転実技教習
- 小型移動式クレーン運転技能講習
玉掛け作業で巻上げ機を使う場合に必要な講習
- 玉掛け技能講習
巻上げ機特別教育の講習内容
巻上げ機を業務として操作する場合、担当の作業員は「巻上げ機運転特別教育」の講習を受講する必要があります。基本的には事業所で実施することになっていますが、都道府県労働局長登録教育機関などでも行われているためそちらを利用することも可能です。
巻上げ機を操作するには、免許を取得するといった資格はありません。「巻上げ機運転特別教育」の講習を受講するだけですので比較的簡単に取得できます。
だからこそ自身で意識を高める必要があり、しっかりと学ばなければ意味がありません。講座の取り組み次第で、自身のレベルアップにも繋がります。
なお「巻上げ機運転特別教育」を必要とする巻上げ機というのは、電気ホイスト、エヤーホイスト及びこれら以外の巻上げ機でゴンドラに係るものは除きます。
学科講習の詳細
学科講習はトータルで6時間です。
巻上げ機に関する知識や運転に必要な一般的な知識などを5時間程度学びます。最後に1時間程度、関係法令についての説明があります。
学科講習のスケジュールは以下の通りです。
科目 | 範囲 | 時間 |
---|---|---|
巻上げ機に関する知識 | 巻上げ機(安衛則第36条11号の機械)の原動機、ブレーキ、クラッチ、ドラム、逆転防止装置、動力伝達装置、電気装置、信号装置、連結器材、安全装置、各種計器及び巻上用ワイヤーロープの構造及び取扱いの方法、巻上げ機の据付方法 | 3時間 |
巻上げ機の運転に必要な一般的事項に関する知識 | 合図方法、荷掛方法、連結方法、点検方法 | 2時間 |
関係法令 | 法、令及び安衛則中の関係条項 | 1時間 |
実技講習の流れ
実技の講習は実際に巻上げ機の操作を間近で見て触れることで行います。
学科講習は教育機関で受講し、実技講習を事業所で行うということも可能です。その場合、それぞれの事業所でテキストなどを参考に行います。
実技講習はトータルで約4時間程度です。巻上げ機の運転や荷掛け及び合図について、実際に行っている様子を見学したり体験したりします。
実技講習のスケジュールは以下の通りです。
科目 | 範囲 | 時間 |
---|---|---|
巻上げ機の運転 | 荷の巻上げ及び巻下ろし | 3時間 |
荷掛け及び合図 | 荷の種類に応じた荷掛け手、小旗等を用いて行う合図 | 1時間 |
安全操作のポイント
巻上げ機を安全に操作するためには、巻上げ機の知識をつけ正しい操作を身につけなければいけません。また巻上げ機の操作は危険が伴うことも意識し、共に働く周囲の作業員にも理解させておくことがポイントとなります。
巻上げ機特別教育の受講手続きと準備
「巻上げ機運転特別教育」は、それぞれの事業所で実施することが基本ですが、全国各地の都道府県労働局長の登録を受けた教育機関でも受講することができます。
また受講方法もいくつかあり、事業所に合った方法を検討することが可能です。受講方法は主に次の3つです。
- 出張講座
- 指定会場の講座
- Web講座
受講申し込み方法
巻上げ機の申し込み方法については、それぞれ教育機関のホームページ等で実施スケジュールや内容を確認することができます。
多くの場合は、Webサイトのフォームからそのまま申し込むことができるため、申し込み方法をよく確認するようにしましょう。
受講の流れ
申し込みをしたあとの流れは次の通りです。
- 教育機関より受講票が届く
(受講票の送付方法:指定リンクよりダウンロード・FAX・郵送など)
- 指定の口座に受講料の振り込み
- 実技講習の実施後、実技実施の報告書提出
- 講座を受講
- 修了証の発行
必要書類と提出準備
受講する際に必要な書類は、本人確認書類のほかは各教育機関によっても違いますのでそれぞれ確認が必要です。
※本人確認書類(マイナンバーカード・運転免許等)
Web講座を受講する場合には、インターネット接続の動作環境を整えておくことが必須です。CIC日本建設情報センター
受講前の準備事項
CIC日本建設情報センターでは、安全教育について受講しやすいWeb講座を推奨しています。Web講座の場合は動作環境を整えておくことが条件です。
動画の視聴ができる機器
- パソコン
- タブレット
- スマートフォン
またインターネットの接続についても確認しておくことが必要です。
まとめ
巻上げ機(ウインチ)が使われている現場は多岐に渡り、さまざまな業界において幅広く利用されています。
どの現場でも無くてはならない重要な機械ですが、巻上げ機による事故は多く現場の労働者の安全が守られているとは言えない状態でした。それは作業員の知識不足や、安全に対する意識の低さが大きな要因と言えます。
巻上げ機を安全で効率的に利用するには、操作する作業員の知識や経験を向上させることが一番の近道です。そして「巻上げ機運転特別教育」の実施が義務づけられました。
安全で効率的な現場は、作業員の意識向上や職場環境の改善にも繋がります。