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危険物取扱者試験とは?甲・乙・丙種それぞれの合格率や難易度をチェック
公開日:2022年8月23日 更新日:2024年9月24日
危険物取扱者試験とは?甲・乙・丙種それぞれの合格率や難易度をチェック
危険物取扱者は、消防法で定められた「危険物」を取り扱うときに必要な国家資格です。危険物取扱者に対する企業のニーズは高く、転職や収入アップのために資格取得を検討中の方も多いことでしょう。
本記事では、危険物取扱者の種別や試験概要、合格率や難易度についてわかりやすく解説していきますので、資格取得に関心がある方はぜひご参考ください。
目次
危険物取扱者とは
危険物取扱者は、消防法で定められた「危険物」の取扱いや管理などに必要な資格です。また、一定数量以上の危険物を貯蔵する施設(ガソリンスタンドや化学工場など)では、有資格者を配置する義務があります。
危険物取扱者の「危険物」に該当するもの
危険物取扱者の「危険物」には、どのようなものが該当するのでしょうか。簡潔に言えば「爆発や火災、中毒の恐れがあるもの」です。例えば、ガソリンやアルコール類、灯油、ニトロ化合物や硝酸などはすべて「危険物」に該当します。
消防法上の「危険物」は性質ごとに6つに分類され、固体・液体・気体の形態を問いません。第1類から第6類までの性質などを見ていきましょう。
■第1類:酸化性固体
【性質】
単独では燃焼しませんが、反応する相手を酸化させる固体です。
【物質】
塩素酸塩類、過塩素酸塩類、無機過酸化物など
■第2類:可燃性固体
【性質】
火炎によって着火しやすい、または40℃未満で引火しやすい固体です。
【物質】
硫化りん、赤りん、硫黄、鉄粉、金属粉、マグネシウムなど
■第3類:自然発火性物質及び禁水性物質
【性質】
自然発火性物質は空気にさらされることで自然発火しやすい固体や液体です。禁水性物質は水に触れると発火や可燃性ガスの発生をおこす固体や液体です。
【物質】
カリウム、ナトリウム、アルキルアルミニウム、黄りんなど
■第4類:引火性液体
【性質】
引火しやすい液体です。可燃性の蒸気を発生させ、点火源(火気、火花、静電気)があると火災や爆発の恐れがあります。
【物質】
ガソリン、アルコール類、灯油、軽油、重油、動植物油類など
■第5類:自己反応性物質
【性質】
自己燃焼しやすい固体や液体です。燃焼に必要な3つの要素のうち、可燃物と酸素供給体(燃焼を助ける)の2つを持ちます。
【物質】
有機過酸化物、硝酸エステル類、ニトロ化合物など
■第6類:酸化性液体
【性質】
単独では燃焼しない液体ですが、混在する可燃物の燃焼を促します。
【物質】
過塩素酸、硝酸、過酸化水素、ハロゲン間化合物など
危険物取扱者は3種類ある
危険物取扱者には、甲・乙・丙の3種類があります。保有する資格の種類で、取扱いや立会い、管理できる「危険物」が違いますので一つずつ見ていきましょう。
■甲種
消防法上の第1類から第6類まで、すべての「危険物」を取扱いできます。また、甲種の有資格者が立会いがあれば、無資格者も「危険物」を取扱い可能です。
■乙種
乙種は、第1類から第6類のうち取得した資格の「危険物」のみ取扱いできます。資格があれば、甲種同様に無資格者の立会い業務も可能です。
■丙種
第4類のうち、ガソリンや灯油など特定の「危険物」のみ取扱い可能です。ただし、無資格者の立会い業務はできません。
上記のとおり、危険物取扱者は甲・乙・丙種に分けられ、取扱い可能な「危険物」も異なります。
危険物取扱者試験の概要
危険物取扱者として業務を行うためには、試験に合格して資格を取得しなければいけません。難易度もさまざまなので、受験を検討している方は試験の概要を事前に確認しておきましょう。
受験資格
ここでは、甲種・乙、丙種の受験資格について詳しく解説します。
■甲種
次の要件を1つ満たせば受験できます。
- 大学などで化学に関する学科などを修めて卒業
- 大学などで15単位以上化学に関する授業科目を修了
- 乙種危険物取扱者免状交付後、2年以上の実務経験を有する者
- 次の4種類以上の乙種危険物取扱者の免状を有する者
- 第1類または第6類
- 第2類または第4類
- 第3類
- 第5類
- 化学に関する学科または課程の修士・博士の学位を有する
■乙、丙種
誰でも受験できます。
試験科目
危険物取扱者の試験科目は、甲・乙・丙種いずれも3科目です。共通科目に「危険物に関する法令」と「危険物の性質並びにその火災予防及び消火の方法」があり、甲種は高度かつ専門的、乙・丙種は基礎的な知識が問われます。
それぞれの試験科目と問題数は次のとおりです。
■甲種
科目 | 出題数 |
---|---|
危険物に関する法令 | 15 |
物理学及び化学 | 10 |
危険物の性質並びにその火災予防及び消火の方法 | 20 |
甲種は試験範囲が広く、高度かつ専門的な問題が多いため、十分な試験対策が必要です。
■乙種
科目 | 出題数 |
---|---|
危険物に関する法令 | 15 |
基礎的な物理学及び基礎的な化学 | 10 |
危険物の性質並びにその火災予防及び消火の方法 | 10 |
乙種は第1類から第6類のうち、受験する類について学習すれば問題ありませんが、基礎的な化学や危険物の予備知識がない初学者は余裕をもって試験対策をしましょう。
■丙種
科目 | 出題数 |
---|---|
危険物に関する法令 | 10 |
燃焼及び消火に関する基礎知識 | 5 |
危険物の性質並びにその火災予防及び消火の方法 | 10 |
丙種は出題数が最も少なく、難易度も高いとはいえません。ただ、確実な合格を目指すなら十分な対策が求められます。
試験日程
試験日程は都道府県ごとに異なります。東京都では月に3〜5回、その他の各道府県では年に1〜2回程度実施され、詳しくは試験団体ウェブサイトで確認できます。
また、居住地や勤務地に関係なく、希望する都道府県で受験可能です。
受験料
受験料は、下表のとおり種別によって異なります。
種別 | 受験料(非課税) |
---|---|
甲種 | 7,200円 |
乙種 | 5,300円 |
丙種 | 4,200円 |
受験の申請
受験の申請は、受験を希望する都道府県へ書面申請又は電子申請で行います。書面申請は願書等を郵送、電子申請はインターネット上で申請する方法です。申請方法ごとに手順を解説します。
書面申請の手順
1)下表の必要書類を揃える
(1) | 受験願書 |
(2) | 甲種危険物取扱者試験を受験する者は、受験資格を証明する書類(卒業証書、免状等のコピー、卒業証明書、単位修得証明書等) |
(3) | 乙種危険物取扱者試験で火薬類免状による科目免除を受ける者は「火薬類免状」のコピー |
(4) | 丙種危険物取扱者試験で科目免除を受ける者は、消防団長、消防学校長が証明する書類 |
(5) | 「危険物取扱者免状」を取得している者は、既得免状のコピー |
(6) | 「郵便振替払込受付証明書(受験願書添付用)」(受験願書と同封) |
引用:試験団体ウェブサイト
2)申請窓口へ郵送する
3)受験票が届く ※証明写真を貼付
4)受験する
電子申請の手順
1)試験団体ウェブサイトより手続きを進める
2)受験票を印刷する(試験10日前から可能) ※証明写真を貼付
3)受験する
申請窓口
受験を希望する都道府県ごとに申請窓口が異なるためご注意ください。
都道府県 | 申請窓口 |
---|---|
東京都 | 一般財団法人消防試験研究センター中央試験センター |
各道府県 | 一般財団法人消防試験研究センターの各道府県支部 |
資格取得後の受講義務
危険物取扱者試験に無事合格しても、資格取得後すぐには危険物取扱者として作業に従事できません。まず、発行手数料2,900円(非課税)の納付と免状交付申請が必要です。そして、受験地の都道府県知事から免状(資格免許)を受け取ります。
その後、危険物取扱者として作業に従事できますが、一定期間ごとに保安講習を受講する義務があります。例えば、新たに従事することとなった者は1年以内に保安講習を受講しなければいけません。一方、作業に従事しない、又はしなくなった方は受講義務がありません。
受講義務については、一般財団法人全国危険物安全協会で詳細を確認できます。
危険物取扱者の試験内容
危険物取扱者の試験内容は、甲・乙・丙種によってそれぞれ異なります。また、乙・丙種では試験科目の一部免除を受けられる場合もありますので、あわせてご確認ください。
甲乙丙それぞれの試験内容
甲・乙・丙種はそれぞれ試験時間が異なります。試験は選択肢の中から正解を一つ選ぶマークシート方式のみで、記述や実技試験はありません。
計算問題もごくわずかなので、わかる問題から優先的に進め、残りの時間を保留した問題に充てるといいでしょう。
種別 | 総問題数 | 試験時間 | 回答方式 |
---|---|---|---|
甲種 | 45問 | 2時間30分 | 五肢択一式 |
乙種 | 35問 | 2時間 | 五肢択一式 |
丙種 | 25問 | 1時間15分 | 四肢択一式 |
一部免除の条件
乙・丙種を受験する際、既に一定の資格を持っている場合には試験科目の一部免除が受けられます。一部免除を受ければ、出題数が減るため試験の負担が軽減されるでしょう。
■乙種を受験する場合
ア)乙種危険物取扱者免状を有する者
科目 | 免除種類 | 免除内容 | 出題数 | 試験時間 |
---|---|---|---|---|
危険物に関する法令 | 全類 | 全部 | 0 | 35分 |
基礎的な物理学及び基礎的な化学 | 全部 | 0 | ||
危険物の性質並びにその火災予防及び消火の方法 | なし | 10 |
イ)火薬類免状を有する者
科目 | 免除種類 | 免除内容 | 出題数 | 試験時間 |
---|---|---|---|---|
危険物に関する法令 | 1類と5類 | なし | 15 | 1時間30分 |
基礎的な物理学及び基礎的な化学 | 一部 | 4 | ||
危険物の性質並びにその火災予防及び消火の方法 | 一部 | 5 |
ウ)乙種危険物取扱者免状を有し、かつ火薬類免状を有する科目免除申請者
科目 | 免除種類 | 免除内容 | 出題数 | 試験時間 |
---|---|---|---|---|
危険物に関する法令 | 1類と5類 | 全部 | 0 | 35分 |
基礎的な物理学及び基礎的な化学 | 全部 | 0 | ||
危険物の性質並びにその火災予防及び消火の方法 | 一部 | 5 |
※火薬類免状は、次の免状を意味します
- 甲種、乙種及び丙種の火薬類製造保安責任者免状(火薬類取締法)
- 甲種及び乙種の火薬類取扱保安責任者免状(火薬類取締法)
乙種受験で一部免除の申請をする場合は3パターンありますが、いずれも保有する資格免状のコピーを添付して受験申請する必要があります。
丙種を受験する場合
ア)5年以上消防団員として勤務し、かつ、消防学校の教育訓練のうち基礎教育又は専科教育の警防科を修了した者
科目 | 免除種類 | 出題数 | 試験時間 |
---|---|---|---|
危険物に関する法令 | — | 10 | 1時間 |
燃焼及び消火に関する基礎知識 | 全部 | 0 | |
危険物の性質並びにその火災予防及び消火の方法 | — | 10 |
丙種受験で一部免除の申請をする場合は、「5年以上消防団員として勤務したことを証明する書類」及び「消防学校での基礎教育又は専科教育の警防科を修了したことを証明する書類」の両方が必要です。
危険物取扱者試験の合格基準
危険物取扱者試験の合格基準は、甲・乙・丙種いずれも「試験科目ごとの得点がそれぞれ60%以上であること」です。もちろん、一部免除を受けた場合はその試験科目を除いて60%以上の得点が必要です。
例えば、乙種第4類(乙4)の合格には下表の得点が必要です。
科目 | 合格基準の得点 |
---|---|
危険物に関する法令 | 9点以上 |
燃焼及び消火に関する基礎知識 | 6点以上 |
危険物の性質並びにその火災予防及び消火の方法 | 6点以上 |
得意な科目で満点を取っても、他の科目で60%を下回ると不合格になるため、得意や不得意に関わらず全体的に学ぶことが大切です。
危険物取扱者試験の合格率・難易度
危険物取扱者試験の受験を検討している方は、試験の難易度が気になることでしょう。甲・乙・丙種それぞれの合格率から、難易度を確認していきます。
甲種の合格率と難易度
甲種の合格率は例年30〜40%程度です。難易度は高いといえるでしょう。甲種では、第1類から第6類までの危険物について学習しなければいけません。化学の基礎知識を持つ人が受験しても3人に1人の合格率で、試験科目の一部免除もありませんので、十分な試験対策が必要です。
【合格率の推移】
実施年度 | 甲種 |
---|---|
令和3年度(2021年度) | 39.6% |
令和4年度(2022年度) | 36.8% |
令和5年度(2023年度) | 31.7% |
乙種の合格率と難易度
乙種の合格率は、乙4のみ30%前後、その他は60〜70%程度です。
乙種受験のメリットとして、乙1から乙6の中で受験する類に絞って勉強できるため、試験傾向を掴みやすい点があります。乙4のみ難易度が高いですが、その他はそれほど高くないといえるでしょう。
【合格率の推移】
実施年度 | 乙1 | 乙2 | 乙3 | 乙4 | 乙5 | 乙6 |
---|---|---|---|---|---|---|
令和3年度(2021年度) | 70.5% | 72.3% | 71.0% | 36.1% | 71.0% | 70.7% |
令和4年度(2022年度) | 69.4% | 68.9% | 71.1% | 31.5% | 71.0% | 70.0% |
令和5年度(2023年度) | 70.0% | 66.8% | 69.2% | 32.0% | 68.4% | 69.2% |
丙種の合格率と難易度
丙種の合格率は例年50%前後です。受験者のうち2人に1人が合格できる難易度といえます。危険物取扱者の初学者なども十分手が届く資格です。
【合格率の推移】
実施年度 | 丙種 |
---|---|
令和3年度(2021年度) | 51.4% |
令和4年度(2022年度) | 51.0% |
令和5年度(2023年度) | 48.4% |
初めての危険物取扱者試験は「乙4」がおすすめ
初めての危険物取扱者試験なら「乙4」受験がおすすめです。「合格率は30%前後と低いのに、どうしておすすめなの?」と感じた方もいることでしょう。そこで「乙4」をおすすめするポイントを3つお伝えします。
1.実務で役立つ
「乙4」を取得すると、ガソリンや軽油など身近な石油類を取り扱えます。ガソリンスタンド、化学工場、石油メーカーなどで勤務できるため仕事の幅が広がります。
2.就職や転職に有利
「乙4」は化学工場の作業員やタンクローリーの運転手など実務で役立つ場面が多く、企業からのニーズが高いため、即戦力として採用されるなど就職や転職に有利です。また、現在の勤務先で作業に従事すれば手当をもらえる可能性もあり、収入アップにもつながります。
3.対策が充実している
「乙4」の受験者数は毎年20万人以上います。そのため、参考書や通信講座が充実していて、「危険物」の初学者や苦手意識を持つ方でも自分に最適な方法で楽しく勉強に取り組めます。通信講座を使えば、重要なポイントに的を絞り20〜30時間程度の学習で合格も可能です。
まとめ
危険物取扱者は幅広い業界で役立つ国家資格です。化学に苦手意識がある人や危険物についてあまり詳しくない人でも、しっかりと試験対策をすれば十分に合格が狙えます。転職やキャリアアップに向けて取得を考えている方は、参考書や通信講座などで効率的に学習し、資格取得を目指してみてはいかがでしょうか。
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