施工管理技士合格をアシスト
建設業特化の受験対策
【2024年4月1日義務化】化学物質管理者とは?専任要件や対象物質、業務内容など徹底解説!
公開日:2024年4月22日 更新日:2024年10月18日
【2024年4月1日義務化】化学物質管理者とは?専任要件や対象物質、業務内容など徹底解説!
2024年4月1日より、化学物質を製造、取り扱い事業場すべてにおいて、化学物質管理者の設置義務が生じています。化学物質にかかわるすべての事業場における、化学物質による労災事故等を防ぐことが目的となります。
では、この化学物質管理者とはどのような業務を行い、選任されるにはどのような要件が必要なのか。この点に関して詳しく解説していきます。
目次
化学物質管理者とは?
2024年4月1日より、改正労働安全衛生法が施行され、この法改正によって誕生したのが化学物質管理者です。化学物質管理者は、化学物質を取り扱う幅広い事業場で設置が義務化されます。これまでこうした管理者の設置義務がなかった事業場でも、新たに設置する必要があり、そのために従業員の中から選任要件を満たす人材を選任する必要が生じているのが現状です。
化学物質管理者の選任が義務化された背景
事業場で取り扱われる化学物質は年々増加の傾向にあります。これまでの法では対処できない化学物質も増えており、より広範な物質に対応できるような制度が求められていました。
実際事業場では、化学物質による労働災害事故も増えています。その実例をいくつか紹介していきましょう。
例えば建築現場における亜鉛中毒の例。ガス溶接機で溶断された空調設備機器の配管を運ぶ作業をしていた作業員が、作業後亜鉛中毒であることが判明。防塵マスクが正しく着用されていなかったことが原因でした。
塗料製造業の現場で発生した労働災害は、亜硝酸ソーダ溶液と硫酸が化学反応を起こし、発生した硝酸ガスを吸った作業員が肺水腫になったというもの。ガス発生時の対策では、原則保護具を着用しての放水となるところ、保護具を着用せずに放水したのが原因と言われています。
最後に3人が亡くなった労働災害の例も紹介しておきます。造船業の作業現場で発生した火災で、作業員はボルトをガス切断していました。その切断時に発生した火の粉が、作業現場の下部にあったガソリンを含む廃液に着火。大きな火災となりました。火災の原因は廃液の存在を作業員に周知していなかったことと言われています。
このように化学物質による労働災害は被害が大きい傾向にあります。こうした状況を鑑み新たに法改正が行われ、化学物質管理者の設置が義務化されました。
これまで以上に広範囲な物質に関する管理者となるため、より多くの知識が求められます。また、こうした化学物質管理者を事業場が選任するということで、化学物質の管理を事業者が自律的に行うようにすることも目的です。
事業場による化学物質管理者の選任要件
では、化学物質管理者の選任に関する要件とはどのようなものなのでしょうか?
ここからは、管理の必要がある化学物質をリスクアセスメント対象物質として表現していきます。
リスクアセスメント対象物質を取り扱う事業場
まずはリスクアセスメント対象物質を「取り扱う」事業場、または「譲渡・提供する」事業場の管理者に関してです。
こうした事業場では選任要件はありません。もちろん選任要件はなくとも、非常に重要な役割を担うポジションですので、一定以上の経験や知識がある方を選任するようにしましょう。
厚生労働省でも、選任要件は不要としていますが、次の項で紹介する講習の受講を推奨しています。単に長く働いており、ある程度の知識があるということで選任するよりは、専門の講習を受講し、化学物質管理者とは何かをしっかりと理解した方を選任するのがおすすめです。
リスクアセスメント対象物質を製造する事業場
リスクアセスメント対象物質を製造する事業場の場合、一定程度の知識があれば誰でもいいというわけにはいきません。厚生労働大臣が認可する「化学物質の管理に関する講習」を受講し、修了した方のみが選任要件を満たすことになります。
CIC日本建設情報センターでも、化学物質管理者向けの講習を行っています。製造事業場向けの講習と取り扱い事業場向けの講習の双方を行っていますので、自社にあった講習を選んで受講していただくことが可能です。
化学物質管理者の主な業務
化学物質管理者に選任された方が行う具体的な業務に関して解説していきましょう。現実的には、各事業場においてここに記されている以外の業務も発生する可能性があります。ここでは、最低限行わなければいけない業務に関してまとめていきます。
安全データシート(SDS)の交付
リスクアセスメント対象物質を含む製品を分類し、対象物質が含まれている場合は、ラベルでしっかりと表示をする、または安全データシート(SDS)を交付し、周知徹底するのが最初の業務です。
その事業場にある物質の中で、どの物質がリスクアセスメント対象物質なのかということを広く周知させます。
リスクアセスメントの実施
リスクアセスメントとは、以下のすべての項目をまとめて表現する言葉です。
・化学物質による有毒性・有害性を特定する
・特定された有毒性・有害性によるリスクを見積もる
・リスクの見積もりに基づくリスク低減措置を講じる
つまり、取り扱う物質の危険性がどの程度のものかを判断し、その危険性を低減するためにはどのような対策が必要かを決定するのがリスクアセスメントです。
リスクアセスメントを自律的に行うことで、事業場で発生する化学物質による労働災害を減らすのが大きな目的となります。
リスクアセスメント結果によるばく露防止措置の実施
上で実施したリスクアセスメントの結果、どのような対策が有効だったかを検証し、さらに有効な防止措置を実施していくのも、化学物質管理者の業務です。もちろん実施は周知徹底し、各従業員がその措置をスムーズに行えるように調整する必要もあります。
労災が発生した場合の対応
リスクアセスメントを行い、しっかりと対策を講じたとしても、労働災害が完全に防げるとは限りません。万が一化学物質による労働災害が起こってしまった際の対応も求められます。
労働災害時の対応といっても、常に現場ですべての工程に目を光らせるというのは難しいものです。化学物質管理者が行うのは、労働災害が発生した場合の対処法を事前に考え、対応マニュアルなどを作成するというのが具体的な業務となります。
どの従業員でもすぐに行えるようなマニュアルを作成し、従業員に周知徹底するようにします。
リスクアセスメント結果のデータ作成・管理・周知
リスクアセスメント対象物質に関して、リスクアセスメントの方法やその結果、ばく露状況などを定期的に記録し、正しくリスクアセスメントが行われているかどうかをデータとして残していきます。
もちろんその中でリスクアセスメントが不十分であると感じれば、見積もりから新たな提言措置の提案・実施を行うことも必要となるでしょう。
こうした記録も従業員に周知し、リスクアセスメントへの理解を深め、より安全に作業できるように推進していくことが重要になります。
化学物質管理者と保護具着用管理責任者に関するQ&A
2024年4月の改正法施行により、化学物質管理者同様、選任が義務化されたのが保護具着用管理責任者です。
保護具着用管理責任者は、化学物質に対するリスクアセスメントの結果、必要となった保護具の選択や管理、また使用状況のチェックや保守管理を行う者になります。
業務自体が化学物質管理者と近いため、この2つの選任すべき者に関して、どのように対処すべきか悩んでいる事業者の方もいらっしゃることでしょう。
そこで、ポイントとなる部分を、Q&A方式で紹介していきます。
Q.化学物質管理者と保護具着用管理責任者はどちらも必ず設置しなければいけない?
A.必ずというわけではありません。
その事業場が、リスクアセスメント対象物質を製造もしくは取り扱うのであれば、化学物質管理者の設置は必須です。保護具直要管理責任者は、化学管理責任者を設置した事業場で、ある条件を満たした場合選任が必要となります。
化学物質管理者はリスクアセスメントを行うと書きましたが、そこで行う対策としては、以下の4つが考えられます。
・代替物質への切り替え
・局所換気装置などの設置
・作業方法の改善
・保護具の着用
この4つを、ここで書いた順に検討していきます。
何よりリスクアセスメント対象物質を使用しなければ、労働災害も起こり得ません。そのためまず考えるのが代替物質への切り替えです。
この切り替えができない場合、次に考えるのが換気装置や排煙装置といった、設備によるリスク軽減です。事業場によっては、敷地的な理由で難しかったり、経済的な理由でこうした大がかりな装置の設置が難しいケースも考えられます。その場合、作業方法を改善することでの対処を考えます。
どの方法でもリスクを軽減できないとなった場合、最終的に選択するのが保護具の着用です。そして、リスクアセスメントの結果、保護具の着用が必要となった場合、保護具着用管理責任者の選任が必要となるわけです。
化学物質管理者がいる事業場すべてに保護具着用管理責任者がいるというわけではありませんので覚えておきましょう。
Q.化学物質管理者と保護具着用管理責任者は同一人物でもいい?
A.法律上は問題ないが推奨はしません。
化学物質管理者、保護具着用管理責任者の両方の選任要件を満たす人材がいれば、1人で2つの職務を兼任することは可能です。ただし、可能といっても法律上問題ないというだけで、どちらの業務もかなり業務量が多く、1人で2つの役職をこなすのは負担が大きくなってしまいます。
一般的には別の人物を選任し、それぞれ自身の業務に集中してもらうという企業が多いかと思います。
まとめ
化学物質管理者は、2024年4月から選任が義務化されました。
事業場で取り扱う化学物質に対し、自律的に安全対策を行うよう促すことが目的であり、従来以上に広範な化学物質に対して、リスクアセスメントを行う必要があります。
選任要件には、製造する事業場と取り扱う事業場によって差がありますが、いずれにせよ、厚生労働大臣が認可する講習を受講し修了することが推奨・義務付けられています。
CIC日本建設情報センターでは、化学物質管理者に向けた講習を全国各地で定期的に開催。講習は製造事業場向けと取り扱い事業場向けがあり、どちらの事業場の方でも受講できるようになっています。
化学物質管理者をこれから選任する、もしくはひとまず選任したものの、より専門知識を持つ者を育成したいという企業様は、ぜひ一度お問い合わせいただければと思います。