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雇い入れ時教育とは何か?必要性や講習内容などをわかりやすく解説
公開日:2024年7月31日 更新日:2024年7月31日
雇い入れ時教育とは何か?必要性や講習内容などをわかりやすく解説
雇い入れ時教育は、あらゆる労働者に必要です。建設業の場合、作業中の事故が懸念されます。リスクを抑えるには、社員やアルバイトなどに対し、一定の教育をしなければなりません。そこで内容を知っておけば、社員教育の適切な準備につなげられるでしょう。今回は雇い入れ時教育について知りたい方のため、社会的な必要性や講習内容などをわかりやすく解説します。
目次
雇い入れ時教育とは?
雇い入れ時教育は労働安全関連の法律により、業種や雇用区分を問わず必要です。十分な教育をしなかったことで、書類送検された事業者もいます。社会的重要性について以下で見ていきましょう。
業種や雇用区分を問わず必要
雇い入れ時教育は、業種や雇用区分を問わず行わなければなりません。新しく雇われたすべての労働者が、教育対象になっているからです。また派遣労働者については、派遣元で教育を受けなければなりません。
雇い入れ時教育は、労働者の安全意識を高めるうえで重要です。とくに建設業は、作業時の事故による従業員の負傷が懸念されます。ほかの業種でも、業務中に不測の事態が起き、ケガやトラブルにつながるかもしれません。あらゆる労働者が安心して働くため、全業種や全雇用区分で雇い入れ教育が必要です。事前教育の受講で労働者は自身や周囲の安全を守りやすくなります。彼らの安全のために、雇い入れ時教育は必須です。
労働安全衛生法で定められている
雇い入れ時教育の法的根拠は以下の2つです。
第五十九条事業者は、労働者を雇い入れたときは、当該労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、その従事する業務に関する安全又は衛生のための教育を行なわなければならない。
2前項の規定は、労働者の作業内容を変更したときについて準用する。
3事業者は、危険又は有害な業務で、厚生労働省令で定めるものに労働者をつかせるときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該業務に関する安全又は衛生のための特別の教育を行なわなければならない。
第三十五条 事業者は、労働者を雇い入れ、又は労働者の作業内容を変更したときは、当該労働者に対し、遅滞なく、次の事項のうち当該労働者が従事する業務に関する安全又は衛生のため必要な事項について、教育を行なわなければならない。
一 機械等、原材料等の危険性又は有害性及びこれらの取扱い方法に関すること。
二 安全装置、有害物抑制装置又は保護具の性能及びこれらの取扱い方法に関すること。
三 作業手順に関すること。
四 作業開始時の点検に関すること。
五 当該業務に関して発生するおそれのある疾病の原因及び予防に関すること。
六 整理、整頓とん及び清潔の保持に関すること。
七 事故時等における応急措置及び退避に関すること。
八 前各号に掲げるもののほか、当該業務に関する安全又は衛生のために必要な事項
2 事業者は、前項各号に掲げる事項の全部又は一部に関し十分な知識及び技能を有していると認められる労働者については、当該事項についての教育を省略することができる。
出典:https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=347AC0000000057
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=347M50002000032
労働安全衛生法第59条では、事業者は新規雇用した労働者に対し、業務上の安全または衛生に関する教育を受けさせなければなりません。また第59条では新規雇用以外でも、労働者の作業内容が変わったときに同様の教育を要します。以上から事業者は、新しい仕事につく労働者が現れれば、彼らに安全衛生教育を受けさせることが必要です。
また労働安全衛生規則第35条では、新規雇用や作業内容変更を受けた労働者の従事業務に応じて、労働者が安全衛生教育を受けさせなければいけません。たとえば機械や原材料などを扱う場合、それに応じた有害性や取り扱い方の教育が必要です。ほかにも安全装置や作業手順、点検方法など、従事業務に応じた教育を要します。雇い入れ時教育には法的根拠があるため、事業者は新規雇用や作業内容変更を受けた労働者に対し、すぐに受講させなければなりません。
雇い入れ時教育をしないと書類送検の場合も
雇い入れ時教育をしなかったことで、書類送検される事業者もいます。たとえば2021年11月16日に建設工事会社とその取締役が、労働安全衛生法第59条違反の疑いとして書類送検されました。同年5月6日に、当時アルバイト初日だった労働者が工事現場開口部から転落し、負傷しています。会社では被害労働者に対し、雇い入れ時教育をしていませんでした。
教育体制の不備が事故の原因と結論づけられ、会社とその代表取締役が書類送検された形です。以上から雇い入れ時教育の不実施はコンプライアンスだけでなく、法律への違反にあたります。違法行為に問われた会社は、社会的信用性を失います。事故や社会的悪評を避ける意味で、事前教育は欠かせません。
雇い入れ時教育は2024年4月に改正された
2024年4月1日に、労働安全衛生規則等について、以下の5項目の改正が行われました。
- 事業場における化学物質に関する管理体制の強化
- 化学物質の危険性・有害性に関する情報の伝達の強化
- リスクアセスメントに基づく自律的な化学物質管理の強化
- 化学物質の自律的な管理の状況に関する労使等のモニタリング
- 化学物質に起因するがんの把握の強化
引用:https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r985200000305a8-att/2r985200000305vu_1.pdf
雇い入れ時教育では、改正後の法律を学ぶこともあります。上記の改正では、主に化学物質の管理体制や、リスク管理の強化が求められる形です。化学物質を扱う事業者および労働者は、雇い入れ時教育前に確かめておきましょう。
雇い入れ時教育のしくみを解説
ここでは雇い入れ時教育の基本的なしくみを解説します。目的と必要性、具体的な項目などを見ていきましょう。教育方法について、4つのポイントに分けて紹介します。
目的と必要性
雇い入れ時教育の目的は、新規労働者への安全衛生の周知です。労働災害はいつどこで起きるかわからないため、労働者の命を守るために社会的必要性があります。建設業が継続的運営をしていくには、労働者への事前教育が欠かせません。
雇い入れ時教育の対象には、建設作業の未経験者がいます。彼らは専門知識が少なく、現場作業に慣れていません。そのため危険に対する認識度も低いとされます。このような人々を事故から守るには、安全衛生教育が重要です。
新規雇用者が安全を守れるように、雇い入れ時教育は欠かせません。そのなかで安全や衛生を学んでいけば、作業現場におけるリスクを認識しやすくなります。安全や衛生の知識の周知が、作業員の命を守るのです。
8つの項目
教育内容は労働安全衛生規則第35条により、8つの項目に分かれています。
- 機械や原材料等のリスク、取扱い方法
- 安全装置や有害物抑制装置、その保護具の性能、取扱方法
- 作業手順
- 作業開始時の点検
- 当該業務で発生の可能性がある疾病の原因や予防
- 整理整頓や清潔の保持
- 事故時の応急処置や退避
- 前7つの項目のほか、当該業務の安全や衛生に関する必要事項
参考:https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=347M50002000032
このように内容はさまざまです。作業で扱うものや装置への認識だけでなく、ケガや疾病の予防や対処なども求められます。以上から労働者は作業内容だけでなく、それに関するリスクも認識しなければなりません。危険性を踏まえたうえで、事故の予防や対処法を学ぶことになります。
対象者
雇い入れ時教育の対象者は、主に以下のとおりです。
- 新規雇用者
- 作業内容が変わった労働者
- 上記以外に、雇い入れ時教育を受けていない労働者
対象者は以上の3パターンに分かれます。新規雇用者だけでなく、作業内容が変わった労働者も、安全衛生教育を受けなければなりません。一定期間同じ会社への在籍を続けていても、部署や仕事内容が変わる方もいます。その場合、新しい仕事に関して安全や衛生の知識を覚えなければなりません。以上から雇い入れ教育は、新しい仕事に関して安全上の予備知識を学ぶしくみです。
実施方法
雇い入れ時教育は、基本的に各事業所で行います。しかし民間の研修会社の講座に、労働者を参加させる事業者もいるようです。近年はeラーニングによる雇入れ教育も展開されています。この場合はパソコンやスマートフォンから特定のサイトへアクセスし、動画やデジタル資料で受講するしくみです。以上から雇い入れ時教育には、さまざまなパターンが見られます。事業所に応じて、最適な形式を取り入れるとよいでしょう。
雇い入れ時教育の内容
雇い入れ時教育は、一般的に合計6時間の受講になります。ただし講座によって、受講時間が前後することもあるので、事前にカリキュラムの詳細を確かめておきましょう。対象の学科と基本的な受講時間は以下のとおりです。
科目 | 受講時間 |
---|---|
安全衛生の基本 | 0.5時間 |
保護具や安全装置 | 1時間 |
正しい安全手法 | 2時間 |
リスクアセスメント | 1.5時間 |
健康の保持 | 0.5時間 |
救急処置の方法 | 0.5時間 |
以上の6科目を学べば受講完了です。安全衛生の基本や道具の使い方など、作業現場における基本的な知識が求められます。ほかにも疾病やケガの対策、対処法などを学ぶしくみです。労働者は業務中のあらゆるリスクを想定し、適切な対処法を覚えることが重要です。
まとめ
事業者は新規雇用された労働者に対し、雇い入れ教育を実施しなければなりません。教育の方法は、事業所でのグループ授業からeラーニングまで多岐にわたります。事業所に合う方法で、雇い入れ教育を実施してください。
教育内容は安全衛生の基本から、事故の予防法や対策までさまざまです。労働者は自分の身を守るため、専門知識や正しいアクションが求められます。作業中の安全に関する予備知識を得れば、事故のリスクを抑えられるのです。