施工管理技士合格をアシスト
建設業特化の受験対策
建築物石綿含有建材調査者とは?資格の概要から試験の難易度まで詳しく解説
公開日:2024年5月16日 更新日:2024年5月16日
建築物石綿含有建材調査者とは?資格の概要から試験の難易度まで詳しく解説
アスベスト(石綿)は危険物質のため取り扱いが厳しく、これまでも資格取得者のみが解体などの作業を行えました。さらに2023年10月からは、アスベストの有無を事前に調査する業務においても資格が必要となりました。ここでは事前調査に必要となった建築物石綿含有調査者の資格の概要や受験要件、試験の内容などについて詳しく解説しましょう。
目次
建築物の解体等の作業を行うときには資格が必要
アスベスト(石綿)は耐火性や断熱性、防音性、絶縁性に優れており、化学薬品にも強く安価でした。そのため建材や工業製品のいたるところで使用されていたのです。しかし1960年以降、アスベストの危険性がわかるとアスベスト吹付の制限や使用制限が段階的に行われ、2012年に使用が全面禁止となりました。
アスベストが使用されている恐れがある建物等の解体時に、アスベストの有無を事前調査することは2023年9月30日までは無資格でも行えた。しかし2023年10月1日以降は、事前調査についても資格が必要になりました。
石綿障害予防規則第3条よりアスベストの解体などの作業を行う場合には、石綿等の使用の有無を調査(事前調査)する必要があります。
建築物石綿含有建材調査者の種類・違いについて
アスベストが含まれている建材を事前調査するための資格は「建築物石綿含有建材調査者」といいます。建築物石綿含有建材調査者は国家資格のため、試験に合格しなければなりません。なお、石綿作業主任者技能講習を修了した資格者は、講習科目のうち、「建築物石綿含有建材調査に関する基礎知識1(1時間)」が免除されます。建築物石綿含有建材調査者は、次の3つの資格に区分されます、
一般建築物石綿含有建材調査者
すべての建築物に対してアスベストを使用しているかどうかを事前調査できる資格で、一般建築物石綿含有建材調査者の講習を受けて筆記試験に合格した人が得られる資格です。カリキュラムは終了考査を含めて12.5時間で、通常は2日間で行われます。試験の合格率は60%〜90%で、真剣に講習会を受講することが合否を左右します。試験に落ちた場合は再受験が可能です。
講習日程 | 2日間 |
講習時間 | 12.5時間 |
試験の有無 | 有り |
試験の合格率 | 60~90% |
講習会のカリキュラムは次の通りです。
- 建築物石綿含有建材調査に関する基礎知識1(1H)
- 建築物石綿含有建材調査に関する基礎知識2(1H)
- 石綿含有建材の建築図面調査(4H)
- 現場調査の実際と留意点(4H)
- 建築物石綿含有調査報告書の作成(1H)
- 筆記試験(終了考査)(1.5H)
CIC日本建設情報センターでは、全国各地で講習会・出張講習を行っています。
2023年10月1日より義務化されているため、ご受講はお急ぎください。
特定建築物石綿含有建材調査者
一般建築物石綿含有建材調査者と同じく、すべての建築物に対してアスベストに関する事前調査が可能です。特定建築物石綿含有建材調査者の講習を受けて試験に合格する必要がありますが、一般との違いは、口述試験と調査票試験が追加されていることです。
なお口述試験は調査者の適性が問われる面接形式で、説明能力などが考査されます。調査票試験は、記述式の試験で、建材の判定能力の有無が確かめられます。複数の試験があるため難易度は一般と比べて高くなります。
講習日程 | 2日間 |
講習時間 | 12.5時間 |
試験の有無 | 有り |
試験の合格率 | 明確な表記無し (一般試験に加えて口述試験と調査票試験がある分、難易度高め) |
一戸建て等石綿含有建材調査者
一戸建て住宅と共同住宅の内部に関してアスベスト含有の事前調査が行える資格で、共同住宅の共用部分は調査できません。一戸建て等石綿含有建材調査者の講習会受講後、試験に合格すれば資格を得られます。カリキュラムは筆記試験も含めて8時間で通常は1日で済みます。難易度は一般とそれほど差はなく、当日の講習会を真剣に受講すれば問題なく合格できるでしょう。
講習日程 | 1日間 |
講習時間 | 8時間 |
試験の有無 | 有り |
試験の合格率 | 60~90% |
講習会のカリキュラムは次の通りです。
- 建築物石綿含有建材調査に関する基礎知識1(1H)
- 建築物石綿含有建材調査に関する基礎知識2(1H)
- 一戸建て住宅等における石綿含有建材の調査(1H)
- 現場調査の実際と留意点(3H)
- 建築物石綿含有調査報告書の作成(1H)
- 筆記試験(終了考査)(1H)
2026年1月1日に工作物石綿事前調査者が施行される予定
2026(令和8)年1月より新たに「工作物石綿事前調査者制度」が設けられることになりました。これは工作物のアスベスト使用実態を調査するために必要な専門知識を有する者の養成が目的で、すでに講習会の募集をしている団体もあり、CIC日本建設情報センターでも優先受付を開始しています。
2日間のカリキュラムで4つの講座を受講後に終了考査(試験)が行われ、合格すれば工作物石綿事前調査者として認定が受けられます。
建築物石綿含有建材調査者の受講資格・資格要件は
建築物石綿含有建材調査者は、誰でも講習会を受けられるわけではありません。受講資格は以下のようなものがあり、いずれかに該当する方が受講可能です。
条件 | 学歴や規定された条件など | 建築に関する実務経験年数 |
---|---|---|
① | 石綿作業主任者技能講習を修了した者 (労働安全衛生法 別表第 18第 23号) |
無し |
② | 下記条件を満たした上で大学(短期大学は除く)を卒業 (※1)建築に関する正規の課程又はこれに相当する課程を修めていること |
卒業後2年以上 |
③ | 下記条件を満たした上で短期大学を卒業(学校教育法による専門職大学の前期課程あっては、修了した者) (※1)建築に関する正規の課程又はこれに相当する課程(夜間において授業を行うものは除く。)を修めていること ※:修業年限が3年の場合は、同法による専門職大学3年の前期課程を含む |
卒業後3年以上 |
④ | 上記③を除き下記条件を満たし短期大学を卒業(学校教育法による専門職大学の前期課程にあっては、修了した者) (※1)建築に関する正規の課程又はこれに相当する課程を修めていること |
卒業後4年以上 |
⑤ | 下記条件を満たした上で高等学校又は中等教育学校を卒業 (※1)建築に関する正規の課程又はこれに相当する課程を修めていること |
卒業後7年以上 |
⑥ | 学歴・経験等の規定なし | 11年以上 |
⑦ | 特定化学物質等作業主任者技能講習もしくは作業環境測定士を修了した者で、建築物石綿含有建材調査に関して5年以上の実務経験 ※:労働安全衛生法等の一部を改正する法律(平成17年法律第108号)による改正前の労働安全衛生法別表第 18第 22号 ※:作業環境測定法(昭和50年法律28号)第二条第五号・第六号に規定する第一種作業環境測定士及び第二種作業環境測定士をいう。 |
無し |
⑧ | 建築行政に関して2年以上の実務の経験を有する者 | 無し |
⑨ | 環境行政に関して2年以上の実務の経験を有する者 ※石綿の飛散の防止に関する者に限る。 |
無し |
⑩ | 産業安全専門官若しくは労働衛生専門官のいずれかに該当する者であったこと(労働安全衛生法第93条1項) | 無し |
⑪ | 労働基準監督官として2年間以上職務に従事した経験 | 無し |
詳細は、こちらに記載があります。
誰でも講習会に受講できる「石綿作業主任者」の資格を取っておくと、実務経験の有無なしに建築物石綿含有建材調査者の講習会に参加できて、受験項目の一部が免除されます。
建築物石綿含有建材調査者と他の関連資格との違いは
建築物石綿含有建材調査者と他のアスベスト関連資格との違いには何があるでしょうか?詳しく見ていきましょう。
石綿作業主任者との違い
石綿作業主任者は、アスベストが含まれている建物を解体する作業の責任者が取得する資格です。作業者がアスベストの含まれている粉塵を誤って吸引しないように作業手順を決定し、安全に作業を指揮・監督します。資格取得のためには講習会に出て試験に合格しなければなりません。
石綿取扱作業従事者
石綿取扱作業従事者は石綿作業主任者の指示に従い、実際にアスベストが含まれている建造物を解体する作業者が持つ資格です。資格を取得するためには講習会を受講する必要があります。
アスベスト診断士との違い
一般社団法人JATI協会が実施しているアスベスト診断士養成研修会に受講して取得する資格で、3日間にかけて行なわれるものです。2023年9月30日以前に一般社団法人日本アスベスト調査診断協会に入会していれば、建築物石綿含有建材調査者の資格がなくても事前調査の実施ができます。現在は建築物石綿含有建材調査者の資格を取らないと事前調査ができません。
まとめ
建築物石綿含有建材調査者は、2023年10月以降に解体などを検討している建築物にアスベストが含まれているか事前調査をするために必要な資格です。資格には一般、特定、一戸建て等の3つに分かれており、一般と特定はすべての建築物、一戸建て等は一戸建てと共用住宅の内部だけと制限があります。講習会の最後に試験がありますが、難易度はそれほど高くなく、当日の講習会を真剣に受講して理解することができれば合格することは可能ですので、早めの取得を目指しましょう。