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工作物とは?工作物の定義から種類まで詳しく解説
公開日:2024年5月15日 更新日:2024年5月16日
工作物とは?工作物の定義から種類まで詳しく解説
一般的に建築される構造物には、いろいろな種類があります。その中でも比較的扱いが難しいのが「工作物」と呼ばれる構造物です。
建築されるものでありながら、いわゆる建物ではない構造物を工作物と呼びます。この工作物にはどのような種類があり、建築する際はどのような手続きが必要でしょうか。
こういった点も含め、工作物の定義や具体的な例、そして種類に関して解説していきます。
目次
工作物とは?
工作物とは「土地に定着する人工物」のすべてを指す言葉です。つまり家屋や事務所といった建築物も工作物の一部となりますが、一般的に工作物と呼ばれるものは、こうした建築物以外の人工物を指すことが多いです。
「土地に定着する工作物のうち、屋根及び柱若しくは壁を有するもの(これに類する構造のものを含む。)、これに附属する門若しくは塀、観覧のための工作物又は地下若しくは高架の工作物内に設ける事務所、店舗、興行場、倉庫その他これらに類する施設(鉄道及び軌道の線路敷地内の運転保安に関する施設並びに跨こ線橋、プラットホームの上家、貯蔵槽その他これらに類する施設を除く。)をいい、建築設備を含むもの」
引用:e-Gov法令検索
要約すると屋根と柱、壁がある施設のことです。
建築物は建築基準法によって定義が定められているため、建築基準法を遵守して建設しなければなりません。しかし工作物は建築基準法の対象外になるため、建築に関して法に定められた条件はありません。
ただし工作物の中にも建築基準法に則り、建築の確認申請を要するものがあります。こうした工作物に関して紹介していきましょう。
準用工作物
工作物の中でも、準用工作物に含まれるものを建築する場合は確認申請が必要です。
準用工作物は建築基準法第88条によって定められており、代表的な重要工作物をいくつか紹介しましょう。
- 高さが2mを超える擁壁
- 高さが4mを超える広告塔
- 高さが6mを超える煙突
- 高さが8mを超える高架水槽
- 高さが15mを超える鉄柱 など
擁壁とは高低差のある土地などで、土砂崩れなどを防ぐ目的で建設される壁状の構造物です。
こうした条件を満たす工作物を建築する場合は、事前に確認申請が必要です。
指定工作物
工作物の中には、建築基準法第88条第2項および建築基準法施行令第138条第3項で定められた「指定工作物」があります。指定工作物は「用途規則を受ける工作物」とされており、代表的なものを紹介しましょう。
- 製造施設
- 貯蔵施設
- 遊戯施設
- 自動車車庫
- 汚物処理場
- ごみ焼却場等
自動車車庫や汚物処理場、ごみ焼却場などは一定の条件を満たしたものが指定工作物です。
指定工作物に関しても、建築に関しては確認申請が必要です。
代表的な工作物
工作物に関して、法で定められている部分を中心に紹介してきましたが、これだけではイメージしにくい方のために、実際に日常生活で見かける工作物をいくつか紹介していきましょう。
誰もが見たことがある工作物としては、街中にある自動販売機です。自動販売機も土地に定着する人工物ですから扱いは工作物です。自動販売機の設置に関しては、建築基準法の対象外になります。
事業場内の製造設備
事業場内に設置された機械設備や製造設備、貯蔵施設などは工作物に含まれます。また上記の通り、指定工作物として指定されている場合は、建築確認申請が必要です。
事業場が事業を行うために必要な施設という点では、街中にある銭湯の煙突も工作物の1つです。またその煙突の高さが6mを超える場合は準用工作物となりますので、こちらも確認申請をしなければなりません。
ゴルフ場
日本中にあるゴルフコースも工作物です。さらに野球場やサッカーグラウンドなど屋外型のスポーツ施設も土地に定着している人工物で柱や壁、天井がないため工作物です。
鉄道や道路
鉄道や道路も扱いは工作物です。大きな道路の立体交差や高架道路に関しても、扱いは工作物です。
建築の申請が必要な工作物とは?
工作物は原則建築基準法の対象外ですので、建築に関して確認申請をする必要はありません。ただし、工作物の中でも条件を満たす工作物に関しては、建築基準法に則り確認申請を提出し、審査を受ける必要があります。
上で紹介したような準用工作物や指定工作物は確認申請の対象で、事前に自治体に確認申請を提出する必要があります。
工作物の建築申請について
特定に工作物を建築する場合には、自治体に対して建築の確認申請の提出が必要です。その確認申請の手順や、注意すべきポイントに関して解説していきましょう。
自治体に建築申請を提出
建築の確認申請は、各自治体の担当窓口に提出します。まずはその自治体の担当窓口がどこになるのか確認しましょう。また、自治体によって申請に必要な書類が決まっていたり、自治体ごとの独自の条例で工作物の建築に制限があったりするケースもありますので、確認申請を提出する前に担当窓口で相談をしておくのがおすすめです。
諸々の条例や条件を確認したら、必要な書類を揃えて確認申請を行いましょう。
検査済証が発行されれば建築可能
自治体の担当窓口に建築確認申請を提出すると審査が行われ、書類の内容に問題がなければ審査は通過となります。審査に通過すると自治体から検査済証が発行されて、工作物の建築に取り掛かれます。
工作物の所有権
工作物とは土地に定着した人工物の総称です。では、その工作物の所有権はどうなるのでしょうか。工作物の所有権は、その土地の所有者のものになります。また、土地の所有権が移れば、工作物の所有権も移行します。
仮にマイホームを購入するにあたって建物のみを購入し、土地を購入していないケースを考えてみましょう。家の所有権は購入者にありますので、家の増改築は自由です。しかし、その土地の外周に外壁が設置されている場合、外壁自体は工作物です。この外壁の所有権は家を購入した方ではなく、土地の所有者となりますので、修繕や撤去に関しては、土地の所有者が決めることになります。
マイホームを購入した方が、勝手に外壁の修繕や撤去はできませんので注意が必要です。なお、家と土地を合わせて購入していれば、外壁の修繕や撤去は自由に行えます。マイホームの購入の際に土地も合わせて購入する場合は、その土地に工作物はないかどうか、あるとすればその処分に関する費用はどうなるのかなどをしっかりと不動産業者に確認しておきましょう。
建築物や工作物の改修・解体工事に関して
過去に建築された、建築物や工作物を解体する、もしくは改修工事をする場合、事前に石綿に関する調査をする必要があります。
2023年10月に行われた法改正で、対象の大小にかかわらず、建築物を改修・改築工事をする前には、石綿が使用されているかどうかの調査を行うことが義務化されています。
さらに2026年1月からは、対象が建築物に限らず工作物の場合でも事前の石綿調査が義務化されます。
建築物の事前石綿調査を行うことができるのは?
改修や解体工事を前に、その建築物に石綿が使用されているかどうかを調査するには資格が必要です。建築物の事前調査を行うのは「建築物石綿含有建材調査者」に選任された方となります。
建築物石綿含有建材調査者に選任されるためには、指定の講習を受講し、修了することが必要であり、解体工事、改修工事を行う事業者は、従業員にこの講義を受講してもらい、資格を取得してもらう必要があります。
工作物の事前石綿調査を行うことができるのは?
2026年1月から義務化される、工作物の事前石綿調査に関しても、資格を持つ方を選任して行う必要があります。必要となる資格が「工作物石綿事前調査者」というものであり、2026年を迎える前に、従業員に資格を取得してもらう必要があります。
工作物石綿事前調査者の講習に関して
工作物石綿事前調査者の講習は、合計11時間以上の講義を受講することとなるため、2日間にわたって受講する形になります。
CIC日本建設情報センターでも、2024年7月から工作物石綿事前調査者の講習を開講予定です。日本全国に講義場所を設置し、2日間の講習を行います。
工作物石綿事前調査者の講習に関しては、開講と同時に講習予約が殺到することが予想されており、CIC日本建設情報センターでは、2024年5月時点で、資料請求を受け付けています。
CIC日本建設情報センターでは、資料請求をされた事業場の方から優先的に受講受付を行いますので、2026年に向けて、工作物石綿事前調査者の用意をしておきたい事業場の方は、まずは資料請求をお願いいたします。もちろん資料請求は無料です。
まとめ
工作物とは土地に定着した人工物全般を指しますが、一般的に工作物と呼ばれるものは、建築物に含まれないすべての構造物のことです。こうした工作物は建築基準法の対象外で、建築基準法を遵守する必要はありません。
しかし工作物の中でも、用工作物や指定工作物などの工作物に関しては、建築の際に確認申請の提出が必要です。確認申請は各自治体の担当窓口に提出し、審査に通過すれば建築可能です。
工作物や建築物、建物、構造物などの建築に関してはさまざまな種類があり、その違いを知っておくことが重要になりますので覚えておきましょう。